自転車に乗る主夫エンジニアの日記

ソフトウェアエンジニア(Web)の日記です。

読書録: マッキンゼーが予測する未来

年末年始に読んだ。

マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

目次

  • 評価
  • 読み方
  • 概要

評価

未来を予測しているわけでない。邦題が良くない。

原題)No ordinary disruption - the four global forces breaking all the trends
邦題)マッキンゼーが予測する未来 - 近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

経済情勢を掴むうえでのきっかけは得られる

都市化、技術進歩、高齢化、グローバル化と、本書が焦点を当てているトレンド自体は決して新しいものではない。ただ、これらのトレンドがこれまで以上の規模で起こり、事業機会、供給力、資本コスト、労働市場へとそれぞれ大きな影響を与えているとわかるのは面白い。

本文がダラダラ長い

本文をメインに読んでいると結局何が言いたいのかわからなくなるので、見出しを読んで意図を理解するのが良い。

読み方

まずは目次と小見出し(目次には載っていない)を読んで、意図を理解するのが良い。その後で、気になるファクトをじっくり読むと効率的である。
大事なのは5、(6)、7、8章なので、そこだけ読めば良い気もする。

概要

第1部

都市化、技術進化、高齢化、グローバル化はこれまで通り、経済情勢を形作る原動力である。
こうした変化が世界の各地(これまで新興国後進国と呼ばれていた国々)で発生するので、急速かつ大規模な変化が起こることになる。

個人的には「高齢化すると年金として貯まるお金より、出て行くお金が増える」という視点がなかったので、それを得られたのが良かった。
これまで大きな資本の供給源のひとつであったと思うので、これまでとは大きく違う力が働くポイントになるのではないかと思う。

第2部

第5章

これから生まれる大都市における需要を取り込もうという話題
「自国での事業をそのまま横展して参入」ではうまくいかないことが多い。商品、サービス、それを提供する組織をその土地に合わせる必要がある。 それを実現するためには、HQは各都市圏をフラットに評価し、権限を移譲するのが良いのではないか。

とあるCEOのインタビューにある「再配分するのは資本のほうが、人材を動かすのよりも簡単です」というのが至言だった。

第6章

新たに生まれる需要を支えるだけの自然資源が足りないという話題 「供給側、需要側の努力によって単位資源あたりの生産性が改善することに期待する」という夢のない話。
各人が単位資源あたりの無駄をなくす施策を実施すること、供給側はコスト増、および原料の供給停止に備えること。

第7章

資本コストは概ね上昇しそうだという話題
これまでは経済の重心が先進諸国にあり、そのなかで豊かな資本供給(長く続いた低金利政策による)と、低い資本需要(交通網、上下水道といったインフラや生産設備への初期投資が必要ないといった事情による)によって、低い資本コストが実現されてきた。
しかし、今は新興国がいたるところで都市化を進め、先進国は古くなったインフラを置き換えようという状況で、資金需要が急速に増えている。
さらに、高齢化が年金プールや貯蓄を削る方向へ作用し、資本供給は減ることになる。
※本書では政府の赤字、積み上がる負債も貯蓄を減らす要因として挙げられている。
こうした事情によって、資本コストが上昇する蓋然性が高まっている。

一方で、各国政府は長く続いた低金利の時代に国債を発行し、負債を積み上げてきている。
こうした多くの政府は停滞する経済成長に悩んでいて、従来のやり方では債務を解消できない。
そこで、中央銀行に恒久的に国債を買い取らせることで、今の状況が維持されるかもしれない。

という現状において、資本の生産性を上げること、新しい資本供給源を探すことが推奨されている。
また、その事例が紹介されていて面白い。

第8章

労働市場で需給ミスマッチが発生しやすくなっているという話題
技術進歩のスピードが早く、人材に求められるスキルの変化も早い。
また、高度なスキルを持った人材に対する需要が増え、そういったスキルを必要としない人材に対する需要が減るなか、供給される人材の割合はこれまでと変わらないという状況にある。

こうした状況において、これまで目を向けなかった属性の人たちを人材源と捉えること、技術を人の代わりではなく人を力づけるものと捉えること、職務を分解して高スキル人材から一部の職務を低スキル人材へ移譲させること、自ら人材を育てることが推奨されている。

第9章

新しく強力な競合がいつ生まれてもおかしくないという話題
新興国で進む都市化は、その国の企業を既存のグローバル企業と肩を並べるまで成長させるポテンシャルがある。 IT技術を活用することで、ベンチャー企業や新規参入企業が既存企業より優位な事業を立ち上げられる可能性がある。

第10章

政治、政策の話題
目前の政策課題として下記箇条書き部のようなことが述べられた後に、 政策予算の規模、政策権限の割振り(中央集権/地方分権)、そもそも政府の役割を見直すことがサラっと提起されている。
予算規模、中央・地方政府の権限、政策スコープを議題にすること自体は良いことだと思うので、もう少し丁寧に扱ってほしい。さすがに前後の脈略がよく分からない。

  • グローバル化と技術進歩によって、非熟練労働者が失業しやすい状況にある一方、理工系分野での人材不足に悩まされている。
  • 積み上がる財政債務、低成長にとどまる経済、上昇するであろう資本コストによって、財政の健全化が迫られている。
  • 失業者が生まれやすく、国内所得格差が広がりやすい状況で、貿易や移民に関わる政策が保護主義に傾きがちである。
  • 大きな破壊的変化が度々起こるので、中長期的にどういった人材を育成し、どういったインフラを整えるべきかを策定するのが困難である。(本当かよ)