読書録: NETFLIXの最強人事戦略
近頃、ソフトウェア開発ではない文脈でアジャイルという言葉をよく目にする。
Harvard Business Reviewが組んだ「アジャイル人事」という特集のなかで、本書の一部が抜粋されたのを読んだのが手に取ったキッカケだった。
どうやらNETFLIXはとても筋肉質な組織のようだ。
評価
時間が許す方は是非とも読んでいただきたい。
語り口が痛快で読みやすい。目次を読んで、自分の心の中にある理想の組織像と照らし合わせるだけで1,600円の価値がある。
具体的な方法論までは明示されていないものの、実際にNETFLIX社内で起こった出来事をもとに、彼らの行動指針が紹介されている。
概要
この組織が筋肉質であるのは、次のようなポリシーで運営されているからだ。
優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底 - この組み合わせがパワフルな組織の秘訣である
まさに筋肉質な組織に憧れを抱く人の理想と一致するのではないか?
要約すると、この一文で済んでしまって味気ない。 以下、面白いと思った記述をかいつまんで引用する。
- 問題が起こったら当事者同士でオープンに話し合うこと
- 率直な意見を促すには、率直に話す人が無事生き延びることを示すのが一番だ
- 事業や顧客のためになる議論をする(そ
- キャパシティビルダー、すなわちチームの能力を高めるスキルをもつ人材が足りているか
- 会社は家族ではなく、スポーツチームだ
- この仕事をするためには、社内の誰ももっていない専門知識が必要か、それともこれはうちがイノベーションを牽引している分野の仕事なのか
- この従業員が情熱と才能を持っている仕事は、うちの会社が優れた人材を必要とする仕事なのか
報酬についても独特(似たようなNETFLIX特有ではないと思うが)で、ボーナス等で従業員をモチベートするつもりがない。
「優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底」から生まれる充実した時間さえあれば、人事評価連動型の報酬でモチベートしなくても大人なら走れる。
人事評価連動型の報酬がなければ、煩雑な評価管理の仕組みが必要ない。
感想
コストセンターと認識されがちな人事部が、まるでプロフィットセンターのように考えて行動していて、ただ関心するばかりだ。
(※零細ベンチャーに所属していた経験からすると、そんなことでは困るのだが。)
人事評価の仕組みも収益に貢献しないのであれば廃止する姿勢からは、できる限りのリソースを収益を上げることに集中させるという意志を感じた。
一般的な企業がコストセンターに割り当てているリソースを、このようにプロフィットセンターに向けられているのは明確な強みだ。
NETFLIXくらい組織のミッション、事業ドメインがクリアだと、筋肉質な組織を実現できるのだろう。つまり、事業計画を要員計画にまで落としやすいのではないか。次の事業目標を達成するために必要な人材、そして必要でなくなる人材が具体的にイメージし、実行する。 NETFLIXも2,000人を超える組織であるから、本書からイメージされるような完全に筋肉質な組織ではないのだろう。 - 事実、人材のミスマッチがあることを文中で認めている。 しかし、そういった規模の会社がこのような方法論で組織を運営しているという事実はある種の夢を与えてくれる。
最後に、本論からは脱線するが、本書から想像されるA級プレイヤーは私の想像を遥かに超えているようだった。 文字通り、 その人にしかできない仕事 をやってのける その人しか知らないノウハウ を持っているプレイヤーが海の向こうにはいるのだろうか。